2008年度

 今年の夏も暑い。
北部九州では梅雨があけたとたんにほとんど雨が降らなくなり、連日うだるような猛暑が続きま
した。これも様々な人為的要因による地球環境悪化のせいでしょうか。

さて、毎年11月第二土曜日に開催しています恒例のよか薬会(薬友会福岡支部)総会・講演
会・懇親会が11月8日に福岡ガーデンパレスで開催されました。総会では庶務および会計報
告の後、大学院薬学研究院長の樋口駿教授から大学の研究・教育にまつわる近況について
紹介がありました。

特別講演ではがん治療における放射線科学の進歩の観点から、九州大学大学院医学研究院
臨床放射線科学講師として臨床と教育・研究にご活躍中の塩山善之先生に「放射線治療の歴
史的変遷と今後の展望」と題するご講演をいただきました。塩山先生のお話の骨子は次のとお
りです。
 『1895年にレントゲン博士がX線を発見し、翌年に鼻咽頭がんに対して放射線治療が行わ
れて以来、放射線治療はがん治療に対して積極的に用いられ、現在、外科治療、抗がん剤治
療と同様、がん治療の3本柱の1つに数えられている。放射線治療は、身体の外から患部へ照
射する外部照射治療と患部の中または近傍に直接放射線源を挿入し照射する密封小線源治
療に大別される。外部照射の分野では、最近、さまざまな方向から病巣に放射線を集中的に
照射する定位放射線治療(SRT)やコンピュータ制御で放射線強度を部分的に変化させて腫
瘍部分のみに更に放射線を集中する強度変調照射法(IMRT)などの高精度X線照射法の開
発、粒子線治療(陽子線、炭素線)の臨床応用など、近年の放射線治療の進歩は著しく、治療
成績は大きく向上している。』

 炭素線を用いるいわゆる「重粒子線治療」は臨床研究を兼ねつつ既に応用段階に入ってお
り、日本が世界をリードする分野の一つです。この方法は副作用は著しく少なく、もちろん癌の
種類にもよりますが、完全治癒率も相当高く、「切らずに癌を治す最新放射線治療法」として最
も期待される治療法の一つとなっています。重粒子線癌治療を行う施設は、現在のところ兵庫
県、千葉県、茨城県の3ヵ所にあるだけですが、九州でも九州新幹線新鳥栖駅前に「佐賀重
粒子線癌治療センター」が建設されて2013年から治療を開始するということです。塩山先生は
2010年4月から九州大学大学院医学研究院・重粒子線治療学講座の教授となられました。

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総会写真2008