2010年度
会次第

総会 よか薬会庶務報告、会計報告:担当理事
報告「薬学の教育、研究の危機」井上和秀氏(22回生)九州大学
  大学院薬学研究院主幹教授・研究院長
講演「味と匂いを測る」
     都甲潔 氏 九州大学主幹教授・研究院長、
  大学院システム情報科学研究院
      座長 井上和秀 氏 九州大学大学院薬学研究院
  主幹教授・研究院長
懇親会
 本年度の総会では、例年どおりよか薬会役員からの事業報告、会計報告などのあと、本年4
月に新しく大学院薬学研究院長に就任された井上和秀教授から薬学の教育、研究の現状に
ついてのご説明をいただきます。ついで会場前のロビーで集合写真を撮り、講演会に移りま
す。講演会の後は懇親会で大いにご歓談下さい。講演会では九州大学大学院システム情報
科学研究院長・教授の都甲潔先生に味覚と匂いの科学についてお話しをいただきます。先生
は1953年福岡県生まれで、九州大学工学部電子工学科卒業、工学博士、九州大学大学院シ
ステム情報科学研究院教授、2008年10月より同研究院長として今日にいたっておられます。
要旨
 味や匂いは測ることができるのであろうか?これらは人の感じる感覚に他ならない。 その上、苦いコーヒーに砂糖を入れると、苦味が減ることから分かるとおり、味質の間 にも複雑な相互作用がある。ところが、最近、味の計測について目覚ましい進展が見ら れた。「人の感じる味を数値化する味覚センサ」の登場である。日本発の技術である味 覚センサは現在、医薬品メーカーや食品メーカーにて利活用されている。味覚センサを 使うことで、苦くない薬の開発、売れ筋食品の発掘、新しい味の創造、味のコンサルテ ィング等、これまで主観でしか語れなかった世界に客観性が持ち込まれ、新しい世界が 開けようとしている。講演では、味覚センサの原理、応用事例を紹介し、さらに匂いを 可視化する匂いセンサの可能性と現状にも触れる。

 プリンにしょうゆをかければウニの味。イカの塩辛に生クリームならショートケー キ。では、牛乳に刻んだたくあんを混ぜると?「コーンスープです。これ、一番の自信 作」甘み、うまみ、酸味、苦み、塩味を数値化する「味覚センサー」を20年かけて開発 した。すべての数値が一致すれば、味はそっくりに。「錬金術ならぬ錬味術」と称す。 九州大大学院教授で、舌の細胞を覆う生体膜の研究者。助手時代、脂質で作った膜に苦 みの違う水溶液をたらすと、生じる電圧が変化した。脂質の種類や比率を変え、酸味や うまみを測る膜も作り出した。味のもとになる化学物質は数十万種類あり、測定不能と されていた。「主観頼みだった世界に、客観的なものさしができた」と評される。セン サーは食品メーカーを中心に売れ筋の分析などに使われる。嫌いなニンジンの食べ方を 考えたのが研究のきっかけ。興味の的は人間で、「技術の前に人あり。人を幸せにする 技術を」がモットーだ。味は科学的アプローチで食文化に迫れるから面白い。人と機械 の調和に貢献した研究者に贈られるオムロンの第1回「立石賞」を5月に受賞した。 「僕にぴったりの賞。一番うれしい」これまでの失敗作は、納豆+チョコレート。水あ めのはずが最低だった。舌触り、歯ごたえ、におい。味は奥深い。五感センサーが次の 課題だ。
「味覚センサー」を開発して味の数値化に成功した都甲潔さん
朝日新聞(2010年8月4日)の「ひと」欄の紹介記事