2014年度
  (2014年7月下旬記)
ご挨拶
よか薬会会長 野田 浩司(第7回生)
 
 昨年7月末に2013年度のよか薬会総会の案内文を書き、それからはやくも一年が過ぎて
しまいました。皆さまにはますますご健勝のこととおよろこび申し上げます。この一年
間はさまざまな重い出来事が、国内外で目まぐるしく起こり続けました。国内では、今
までの日本のあり様を土台から変えてしまう出来事が生じています。適用次第では戦前
の治安維持法に勝るとも劣らない特定秘密保護法の成立、日本人が「他国A防衛」のため
「他国B」の人と殺しあうようになる憲法九条の解釈変更=集団的自衛権の行使容認、な
どです。原発も再稼働されようとしています。またマスコミにはほとんど出ませんでし
たが、6月20日に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」が異例のはや
さで成立しました。この法律は、教授会の権限を学長のトップダウン型ガバナンスに集
約するもので、大学にとどまらずこの国の将来に大きな影響をもたらすと云われていま
す。これらのことに賛成か反対か、おかしいと思うか当たり前と思うか、個人個人いろ
んな考え方があるでしょう。しかし私たち国民としての十分な議論のうえで成立したの
か、については疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか。どのような国のあり方
がみんなの幸せなのか、私たちみんなで活発、声高に議論し、それを政治に十分に反映
させる、これが民主国家における国民と政治との関係であると信じています。

  
  会次第
 総 会
  よ か 薬 会 報 告: 庶務(山下正義 28回生)、会計(一木孝治 48回生)
  九大薬学部報告:大戸 茂弘 氏  九州大学大学院薬学研究院 教授・研究院長
  「九大薬学の現状
 講演会
  講 演 谷口 初美 氏 (21回生)  産業医科大学 教授 医学部微生物学教室
  「細菌叢解析の環境及び臨床検体への応用 〜東北震災後の感染リスク評価を含む〜」
    座 長 麻生真理子 氏  九州大学大学院薬学研究院 准教授
懇親会
  日 時  2014年11月8日(第二土曜)  17時 〜20時30分
  場 所  福岡ガーデンパレス 
【講演要旨】  「感染症は癌と違って薬が合えば良くなります。でも検査しても原因
菌が分からなくて苦労する症例が増えています」とはある医師の言葉です。19世紀末コ
ッホが炭疽菌、結核菌の発見にもとづいて、培養法による感染症の起炎菌同定の原則を
打ち立てて以来140年、数千種にのぼる病原菌が発見されました。ペニシリンが発見され
て80年、種々の抗菌薬の発見、合成も相次ぎ、感染症は薬で治せると思われた時代が続
きました。しかし、薬剤耐性菌が蔓延し、抗菌薬発見前の時代に戻ると、2014年WHOは抗
菌薬使用の適正使用を警告しました。しかし、医療の高度化で感染症が複雑化し、従来
の方法では起炎菌同定ができず治療困難となる症例が増えています。我々は平成11年福
岡県で発生した処分場における硫化水素ガスによる労災死亡事故を契機に、有毒ガス発
生予知、感染リスク対策のために土壌の細菌叢を解析する分子遺伝学的方法を構築しま
した。本会では、この方法で解析した各種処分場、東北のがれき、へどろ、原因不明の
臨床検体の症例を紹介したいと思います。
【谷口初美氏略歴】 1968年(S43)九州大学薬学部入学、1972年(S47)同卒業、1974年
(S49)同修士課程修了(微生物薬品化学教室、堀内忠郎教授)、1974年〜1980年(S49年
〜S55年:九州大学医学部細菌学教室助手(武谷健二教授)、1980年〜1993年(S55年〜
H5)産業医科大学医学部微生物学教室(初代水口康雄教授、2代吉田真一教授)助手、 
1993年〜1998年(H5〜H10)同助教授、1999年(H11)〜現在同教授
〔所属学会〕日本細菌学会、日本感染症学会、日本環境感染学会、American Society 
for Microbiology、日本産業衛生学会、ICOH、日本農芸化学会、日本廃棄物学会など 
〔その他〕SMART・LLP(産業医大微生物解析研究開発有限責任事業組合)代表、KRICT
(北九州地域感染制御ティーム)副理事長、アリスの会初代会長